FAMシネマテーク

vol.7

香港映画特集

3月27日(土)

福岡市美術館・ミュージアムホール

1作品 1,500円(当日券のみ/税込)

Introduction

中国大陸との関係で揺れ続ける香港。そんな香港で、必死に生きる市井の人々を描いて現地で圧倒的共感を得た2作品をご紹介。

『淪落の人』のオリバー・チャン(陳小娟)監督、『誰がための日々』のウォン・ジョン(黄進)監督は共に30代初めでこれがデビュー作。

前者はアンソニー・ウォン(黄秋生)、後者はエリック・ツァン(曾志偉)という香港を代表する名優たちが、作品にほれ込んで報酬に関係なく出演を快諾。全身全霊をかたむけて若い才能の情熱に応えている。

淪落の人福岡市内初上映

それでも人はなお夢を抱く。

工事現場での事故の影響で、全身麻痺状態になってしまった初老の男性・昌榮。孤独な一人暮らしを強いられる彼のもとに、フィリピンから住み込み介護の家政婦がやってくる。彼女イヴリンは、広東語を話せない。コミュニケーションがとれず、イライラをつのらせる昌榮であったが、ひたむきに介護を続けるイヴリンの姿は、ゆるやかに彼の心をときほぐし、気がつけば二人は親友のような関係になっていた。

『淪落の人』は創作ではあるものの、監督が実際に街で見かけてインスピレーションを受けた光景や、母親の介護体験など、現実の断片を組み合わせた物語。「境遇や文化が違っても、誰もが、愛や欲望、夢など、人生における美しいものを求めているのでは?」多くの問いかけや、想像・考察を経て作られた本作は、香港の四季に人生の四季を重ねながら、人が夢を抱くことの大切さを描いていく。

フィリピン人を中心とした出稼ぎ外国人家政婦は、香港社会を支える重要な人的リソースであり、それゆえに香港・フィリピン両地の映画に登場することもしばしばあるが、多くの場合、それらは物語の背景に過ぎないか、「フィリピン人労働者のつらい現実」を描くためのテーマであったという印象が強い。しかしながら本作は香港人雇用主と外国人家政婦との友情のドラマという、ありそうでなかった世界を構築した。

主演は香港を代表する演技派俳優のアンソニー・ウォン。半身不随という難役を見事にこなし、香港電影金像奨をはじめとする数々の主演男優賞を受賞。監督のオリヴァー・チャンは、香港で今最も注目を集めている新鋭の女性監督。主演女優は映画初出演のフィリピン人女優クリセル・コンサンジ。『メイド・イン・ホンコン』のサム・リー、『風の輝く朝に』のセシリア・イップ(葉童)のヴェテランが脇を固めている。本作は第38回香港電影金像奨をはじめとする数多くの賞に輝き、第14回大阪アジアン映画祭・観客賞、第21回ウディネ・ファーイースト映画祭など、国際的な映画祭も席巻した。

予告編 公式サイト

  • 監督:オリバー・チャン(陳小娟)
  • 出演:アンソニー・ウォン(黄秋生)、クリセル・コンサンジ、サム・リー(李璨琛、セシリア・イップ(葉童)
  • 2018年/香港/112分
  • 原題:「淪落人」
  • 提供:武蔵野エンタテインメント

誰がための日々福岡市内初上映

一番大切なものは、目に見えない。

家を出た父・大海、アメリカに永住した弟に代わって、一人、寝たきりの母親を看病してきた阿東。フラストレーションの溜まる日々を過ごしてきた母と息子に、ある日、悲劇は起こる。いつものように、阿東が失禁した母の身体を洗い流していたその時、バスルームで発生した事故で母は死亡。ショックのあまり重いうつ病を患った阿東は、そのまま精神病院に入院した。それからしばらくの月日が流れ、退院した阿東は、父と二人で、狭いアパートでの生活をスタートする。だが、心の病に香港の世間は冷たい。誤解、偏見、蔑視、さまざまな困難が父と阿東に降りかかってくるのだが……

返還以降、新人監督の活躍の場が減少しつつある香港映画界に、突如現れた新星ウォン・ジョンの長編デビュー作は、重く、辛い、でも「いまの香港でしかつくれない」映画。本作は、2017年香港金像奨で主要8部門ノミネートされ、結果助演男優賞、助演女優賞、新人監督賞を受賞。台湾金馬奨では助演女優賞と新人監督賞を受賞、大阪アジアン映画祭ではグランプリを獲得。香港映画界を代表する俳優の一人、エリック・ツァン(曾志偉)と『インファナル・アフェア無間序曲』や『恋の紫煙』シリーズのショーン・ユー(余文楽)が主役の父子を熱演。香港映画界を代表する俳優の一人、エリック・ツァン(曾志偉)と『インファナル・アフェア無間序曲』や『恋の紫煙』シリーズのショーン・ユー(余文楽)が主役の父子を熱演。母親役に『牯嶺街少年殺人事件』などで知られる台湾出身の名女優、エレイン・ジン(金燕玲)、主人公の恋人役を香港の実力派シンガーソングライターのシャーメイン・フォン(方皓玟)が好演している。地元香港では公開されるや220万USドル(日本円で2億5千万円)という大ヒットを記録した。

原題のタイトル「一念無明」は、「大乗起信論」の注釈書の中にある、中国仏教では有名な一節「一念無明生三細、境界為縁長六粗(一たび無明を念ずれば三細生じ、境界は縁と為りて六粗を長ず)」から取られており、真理に暗いと余計な煩悩に悩まされる、というような意味。本来、人は希望の中で歩み、生きているはず。辛い日々を過ごしていると思った時、少し考え方を変え見る方向が違えば、もっと違うものが目に入り、もっと違う人生に気づくかもしれない。

予告編 公式サイト

  • 監督:ウォン・ジョン(黄進)
  • 出演:エリック・ツァン(曾志偉)、ショーン・ユー(余文楽)、ショーン・ユー(余文楽)、シャーメイン・フォン(方皓玟)
  • 2016年/香港/102分
  • 原題:「一念無明」
  • 提供:スノーフレイク

ご来場に際しての注意

上映スケジュール

3月27日(土)

1 10:00~11:42 誰がための日々
2 12:30~14:22 淪落の人
3 15:00~16:42 誰がための日々
4 17:30~19:22 淪落の人

※開場は各回30分前より

会場福岡市美術館・ミュージアムホール

「FAMシネマテーク」は福岡市美術館・ミュージアムホールを会場に、これからも貴重なプログラムを提供してまいります。